【スライド公開】withコロナにも機敏に対応できたクラウド経営と業務効率化 「滋賀銀行様 登壇レポート」

こんにちは。取締役の柚木です。
今日は、2020年9月12日に弊社の代表取締役・井上が登壇した、滋賀銀行様(以下敬略)が主催する「『しがぎん』ビジネスフォーラム2020 サタデー起業塾」の登壇の様子を記事として残したいと思います。当日のスライド資料も公開していますので、是非ご覧ください。

このビジネスフォーラムは21年の歴史があり、滋賀銀行の頭取が参加するほどの力の入ったセミナーです。今年はコロナ対策のため、席の間隔を大きくとり、50名限定となりました。また、Zoomでの中継も同時に行い、オンラインからの多くの参加があったそうです。

ビジネスフォーラムの様子

今回お声掛けいただいた背景として、以下の弊社の特徴が挙げられます。

  • 子育て中の女性100名以上を直接雇用していること
  • 常時産休育休10%以上を実現させていること
  • クラウド経営と業務効率化によりコロナ禍でも事業を加速させていること

 
そして以下の4点が、今回の講演でお持ち帰りいただけそうなポイントにしていました。
それでは講演のスタートです。

取り組みのポイント

※上記画像はスライドショーでご覧いただけます
※当日のスライド資料を一部改変・再構成しています

第0章 「井上拓磨」と「はたらクリエイト」

こんにちは。株式会社はたらクリエイト・代表取締役の井上です。
株式会社はたらクリエイトは、長野県上田市/佐久市を拠点に事業を行っています。公益的な観点も併せ持った事業を行っているため、内閣府や上田市の委員なども務めさせていただいています。はたらクリエイト以前は、会社員〜フリーランス〜コワーキングスペース経営者を経験してきました。

井上さんのプロフィール

私たちは、この会社のミッションを大事にしています。全ての判断が、このミッションをベースにされていると言っても過言ではないと思います。

ミッション

弊社の従業員は、現在114名。113名が女性で、特に子育て中のスタッフが多い組織です。常に10名ほどが産休に入っています。

オフィスの様子

併設した託児所も運営しています。12時になると、託児所の子どもたちはオフィスフロアに開放されるため、強制的に昼休みに突入します。

託児所の様子など

佐久オフィスには、最近テラスを設置しました。クライアントを招いて「バーベキュー営業」も行っています。昔で言うところの「ゴルフ営業」です。

バーベキュー営業の様子など

続いて、弊社のサービス「banso.」について紹介します。
banso.は、「ともに成長するチームをつくろう。」をサービスビジョンとした、社外に貴社専属のチームをつくり、業務をアウトソーシングできるサービスです。

当日は、サービスの内容について軽くご案内しましたが、この記事では割愛いたします。
社外に社内部署のようなチームを形成でき、新しい人材確保の一手としても活用いただいています。ご興味ある方は、以下のリンクから詳細をご覧ください。

banso.について1
banso.について2



 

第1章 現在に至るまでの経緯とハードル

コワーキングスペースの運営

私が上田市に来たのは、上田市出身の妻の「上田に帰りたい」という要望があったからです。当時は北九州でサラリーマンをしていましたが、退職して上田市に行くことになります。

その後、フリーランスのエンジニアとして姉の仕事を手伝っていましたが、生粋のエンジニアとしてやっていくことや在宅ワーカーとして働くのも向いてないと感じていました。仕事の仲間も上田市におらず、知り合いは妻の家族を含めて4,5人程度でした。

そんな時に出会ったのが、日本でも広がり始めていた「コワーキングスペース」です。上田市で仕事の仲間をつくろうと、コワーキングスペースの運営を始めました。

コミュニティ形成期と探索期についての図1

創業者を増やす取り組み(創業支援、移住・企業誘致など)や創業者を支えるITワーカーを増やす取り組みなど、次第に事業は大きくなり、店舗も3つに増えていきました。しかし、私の経営者としての力不足もあり、法人としての経営に行き詰まっていきました。

倒産危機:事業の選択と深化

そして倒産の危機を迎えます。コワーキングスペースでは横への探索がほとんどで、事業の深化をすることができず、赤字が続いてしまいました。そこで、事業の整理を行い、子育て中の女性が働きやすい環境をつくり、ワーカーとして育成していく事業に集中することにしました。

「両利きの経営」という本において、「探索と深化」の両方が大事であることが述べられています。それは何かというと、「まるで右手と左手が上手に使える人のように、『知の探索』と『知の深化』について高い次元でバランスを取る経営」のことを指します。

これまで私たちは「探索」はおこなってきましたが、利益を生み出す「深化」をすることができていませんでした。この機会に、一気に深化へのアクセルを踏むことになります。

コミュニティ形成期と探索期についての図2


 

はたらクリエイトの成長:再び探索へ

事業の深化は2015年当初、3人でスタートさせました。当時を思い出すと非常に困難なこともありましたが、なんとか従業員も増えていき、現在では100名を超えるまでになりました。2019年5月には、佐久にも新たなオフィスを立ち上げ、年間の売上も1.5〜2億円ほどに成長しています。

スタッフ数の推移

ここで先程の「探索と深化」の話に戻します。
事業の収益が出てくると、勝手に「深化」に寄っていき、「探索」をしないようになっていきます。これは自動的にそうなっていくのですが、収益が出ている事業がある時にわざわざ収益の出なそうなことをしたくない気持ちもわかります。収益を出している部門からは、「それって事業として成立するの?」「そこに投資するの?」「自分たちが稼いだお金で楽しそうなことしてる」と、そう思われることもあるでしょう。

しかし、はたらクリエイトは、より社会に仕事を楽しむ人を増やすために、いま「探索」をやり始めています。現時点で収益を出している事業をベースに、新たな種まきをしていくべきだと考えています。

コミュニティ形成期と探索期についての図3



 

第2章 これまでに得られたこと

自分を救ってくれたメンターの存在

順調に事業が回復してきたように見えますが、事業を整理しなければならなかった時は、本当に辛かったです。経営者としての自信も失っていましたし、地域の人に「ほら見たことか」と言われて精神的に参っていました。

お前のやっていることは間違っていない。ただ、夢を実現するための見積もりを間違えただけだ

そんな時に自分を救ってくれた言葉がこちらです。既に引退している先輩経営者のメンターに言われたのですが、「実現させるための資金調達をしていなかっただけ」「やっていることは間違ってない」「仕事はないけど人はいるじゃないか」と。

これまでコワーキング時代に創業支援をやってきたつもりでしたが、手を差し伸べてくれるメンターの存在こそが創業支援の本質なのだなと思いました。

経済的価値と社会的価値の両立させること

丁度良い社会課題をセットできるかが重要です。

私たちは経済的価値よりも社会的価値を優先させてスタートした企業なので、お金がついてくるのが遅く、組織を維持するのが大変です。逆に経済的価値を優先してビジネスを進めていくと、社会的価値が見つからないという結果になることもあります。

2006年にマイケル・ポーターが提唱した「CSV(Creating Shared Value)」や2015年に国連サミットで採択されたSDGsなど、事業を通じて社会的価値を高めることが企業を継続的に成長させる重要なファクターということがわかってきました。

弊社は「女性の結婚や子育てによるキャリアの断絶」「人口減少による働き手不足」「女性の非正規化」などの社会課題を解決するために現在の事業スタートしています。社会課題を解決することが事業となっているため、常に社会課題に向き合ってきました。企業を維持させるために稼ぐことと、社会課題の解決の間で何度も悩みながら会社を経営してきましたが、「どちらかがミッションに忠実か」と厳しい道を選んで進んできました。

私たちのように、ここまで社会的価値を優先させてスタートすることは珍しいパターンかもしれません。貧困など生命に関わる課題、人間の尊厳に関わる課題から地域の課題、社員の課題など、皆さんの事業の周りにも大小さまざまな社会課題が隠れています。

多様な社会課題を起点として、自身の事業を見つめ直してみることをおすすめします。

(スライド資料には社外秘を含むためテキストのみ)

統計から未来を予測し、社会課題を定義すること

社会課題を把握する際におすすめしているのは「統計情報から考える」ことです。統計情報は過去から現在の状態を把握できて、さらに近い未来を予測することもできます。いくつかの統計情報の相関を見てみると、社会課題の根っこが見えてきます。

現在の事業を検討したキッカケは、、人口が減少すること都市と地方の求人倍率差女性の労働力率のM字カーブ(結婚・出産期に低下・育児が落ち着くと再上昇)男性と女性の給与差正規非正規の給与差女性の理想とする働き方と現実の働き方

など、いくつもの統計情報を源としており、「女性と社会をつなげるコワーキングスペース」、さらに「地方における女性のキャリア醸成」という現在の事業につながっていきました。

起業家仲間と話しているときに、「ちょうど良い問題を社会課題と定義することが重要だ」という話をしたことがあります。感じた不満などをただの問題にしておくのではなく、課題としてセットして解決しようとすると社内外の人たちの思考が変わっていきます。

「私はこんな社会が作りたい。そのためにこの課題を解決しよう」と社内外で話してみるのが良いのではないでしょうか。

(スライド資料には社外秘を含むためテキストのみ)

ミッションに対する自分の原体験への気付き

当日は時間の関係で割愛させていただきましたが、こちらの記事にまとまっておりますので、ご興味ある方はご覧ください。



 

第3章 withコロナ時代

不確実性の時代

コロナウイルスの影響もあり、社会変革が物凄いスピードで進んでいます。現代は、未来を見通しにくい「不確実性の時代」とも言われています。これまでは社会環境が比較的安定していたため、ビジネスはスピードとそれを実現するための資本力が重要でした。しかし、不確実性の時代では、変化することを恐れず日々変化し続けることが最も重要だと言われています。

そこで重要になってくるのが、「組織レジリエンス」と「アジリティ」という概念です。

組織レジリエンスとアジリティについて

「組織レジリエンス」は、突然の変化・混乱に対して予見・準備・対応・適応ができ、組織が折れることなく立ち直れる「打たれ強さ」のことです。また、ビジネスにおける「アジリティ」とは、企業経営や組織運営を進めていく際に直面する環境変化に対し、即時に判断・対応していくことです。詳しくはこちらの記事を参考にしてみてください。

これらを高めていくには、「いかに事業の解像度を高め続けるか」が重要になってきます。見えているデータが、会社全体、事業部単位、チーム単位、個人単位と細かくなっていくほど、「解像度が高い」ことになります。解像度を高めるほど、いろいろな情報が集まってきて、そこにある課題もより明確に理解できるようになります。すると、その課題に対して素早く最適な改善策を導き出すことができるようになるのです。


 

社会の変革:Digital Transformation(DX)

さて、皆さんは「DX」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。ここ最近で一気に広まってきた言葉なのですが、書類のデジタル化・ペーパーレス化などと勘違いされている方もいるようです。

2018年に経済産業省が出した「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」によると、、
DXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と、定義しています。

DXについて1

これまではオフラインを便利にするツールの1つがオンラインでしたが、DX時代は全てのものがオンラインに繋がってきます。それは、オフラインはオンラインのツールの1つになるということでもあります。そのため、DX時代は顧客接点や関係性などビジネスのあり方が変容してくるでしょう。モバイル、AI、IoTテクノジーに続く、データ時代の第4次産業革命と言われているのはそのためです。
 

さらに、2019年に経済産業省が出した資料によると、2025年までにシステムの刷新を集中的に行う必要があると記載があります。さらにそれを実行できないと、2025-2030年までの間に、年間で最大12兆円の損失を生むと指摘しています。

DXについて2

そして、日本CTO協会の資料も見てみると、DXのためのIT戦略には2種類の投資があるとされています。「攻めの投資」と「守りの投資」です。

▼攻めの投資
DXの進んだ組織では、自社の利益増大やビジネスの変革につながるようなコアな機能に関してを集中して自社開発する傾向があります。 これを「攻めのIT領域」といいます。この領域では、ソフトウェアに対する知見が自社に残るように内製開発が望ましいです。

▼守りの投資
すでに「コモディティ」となったソフトウェアの構成要素は、自社で開発するのではなくうまく外部サービスを活用していくことが望ましいのです。この領域を「守りのIT領域」と言います。現代は、SaaS型の事業が増えています。これらをうまく選定し活用しましょう。「守りのIT領域」をオーダーメイドで作る必要はありません。

引用:DX Criteria v201912- 「2つのDX」とデジタル経営のガイドライン https://cto-a.github.io/dxcriteria/


 

オフィス環境のクラウド化と経営数字の見える化の方法

特に中小企業の「守りのIT投資」においては、事業の解像度を上げていくために、SaaS(Software as a Service:ベンダーが提供するクラウドサーバーにあるソフトウェアを、インターネット経由してユーザーが利用できるサービス)を上手に活用し、ツールをクラウド化していくことが最初の重要なポイントになります。

SaaSといっても非常に多くの種類があり、自社に合ったサービスを選定するだけでも大変なのですが、、私たちが利用しているSaaSをご紹介しておきますね。カオスマップ内で黄色くハイライトしてるサービスを我々は利用しています。

SaaSカオスマップ

参考:https://boxil.jp/mag/a6570/

しかし、業務で使用するツールをSaaSに切り替えただけでは不十分です。次のステップとして、業務全体のクラウド化を行い、さらには、クラウド技術を活用して、ツール同士のデータ連携を行うことで業務の自動化までを進めていきます。
(ここまで到達していたことが、コロナ禍での事業成長を支えました。ほぼ全スタッフが在宅ワークに急遽切り替えましたが、スムーズな移行ができました。)

私たちはツール同士の連携に、Googleが提供しているG Suiteというパッケージ内にある「スプレッドシート」を使っています。

オフィス環境のクラウド化のステップ

下記の図がが私たちの使っているツールの連携マップになります。

ツール設計と連携のピラミッドチャート

スプレッドシートの良いところは、データ連携の際のカスタマイズ性の高さにあります。Google Apps Script(GAS)を使用するため、コードを書く必要はありますが、覚えてしまえば非常にスピーディーに連携させることができます。最近はノーコードで連携できるサービスも出てきていますが、思い通りに連携させるには、スプレッドシートの方が優秀です。

これまで人力で行っていたことを自動化していったことで、いわゆる「総務」という仕事の量を削減することができました。現在114名のスタッフがいますが、80時間程度にまで収めることに成功しています。
 

下の表は、スタッフに各案件で使用した日々の稼働時間を記入してもらっているスプレッドシートです。この表に毎日の稼働時間を記入していくと、、、

稼働時間を記録するスプレッドシート

こちらのような事業の月間レポートが、”自動的に” 生成される仕組みになっています。

自動生成される月間レポート

月の途中でもどんどん更新されていくため、何か異変が起きていても素早く察知することができ、スピーディーな対処が可能になります。

中小企業のDX化の最適解

これまでの経験から、私たちは中小企業のDX化の最適解を以下のように設定しています。

基本構成は、「通常業務で使用するメインツール」と、それを連携・補助する「スプレッドシートを含むG Suiteの様々なサービス」を組み合わせることです。そしてオプションとして、チャットツールや請求関連のツールを選択していくのが良いでしょう。

中小企業のDX化の最適解の図

 

《宣伝》
2020年3月に、新たに「株式会社TSクラウド」という会社を設立しました。この会社では、Googleが提供するG Suiteの販売代理店を行っています。今後は、banso.だけではなく、G Suiteの販売、G Suiteを核とした中小企業のDX化を推進するサービス「mieteru.」の提供も行っていきます。既にmieteru.は、弁護士法人を対象にしてスタートしており、徐々に別の業界でもチャレンジして参ります。



 

第4章 これから私の目指すこと

これが、株式会社はたらクリエイトのロードマップです。少し情報が古い部分もありますが、今は2段階目に入っています。

はたらクリエイトのロードマップ

私たちは、女性がライフステージに合わせて働くことができる仕組みを構築しました。現在は、よりチャレンジして仕事を楽しめるよう、新事業や新サービスの創出に取り組んでいます。

また、人材不足に陥る地方企業、女性に限らず地方の人材のキャリア醸成、子どもたちへのキャリア教育など、私たちが解決したい様々な社会課題が存在しています。私たちは、これからも「はたらくをクリエイトして仕事を楽しむ人を増やす」というミッションのもと、未来に残したい社会をつくっていきます。

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視察や企業合宿などでも使っていただけますので、是非お問い合わせください。

 

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ライタープロフィール

取締役CMO 登り方にこだわり過ぎる登山家

柚木 真
株式会社はたらクリエイト取締役・デジタルマーケ/SEO/広報。Google Workspaceの正規代理店である株式会社TSクラウド、マーケティング担当。「モクモク勉強&実行」の繰り返しが好き。息するように仕事する。新宿区生まれ育ち、長野県へ移住。温泉・ビール・焚き火があると昇天。ポテサラ食べたい。