コロナ禍におけるサービス継続のためのリスクマネジメントと状況に合わせた施策

こんにちは。はたらクリエイト取締役COOの高木です。

長野県に拠点を持つ弊社では、新型コロナウイルスの感染拡大の中で、クライアント企業様の「リモートチーム」の運営を維持し、共に成長し続けられるよう、事前にリスクを想定し、従業員アンケートで現状把握をしながら施策を実施してきました。

今回は、この期間中に取り決めた方針や、従業員アンケートの結果、実施した施策について まとめておきたいと思います。

高木 奈津子|たかぎ なつこ
長野県上田市で株式会社はたらクリエイトを設立。取締役COO、キャリアコンサルタント。出産・介護・パートナーの転勤等を理由に、仕事にブランクがある約100人の女性を雇用し、キャリア再構築の仕組みづくり・組織開発に取り組む。共に創る / 補い活かし合う / リモートチーム / 仕事を楽しむ人を増やす
Twitter:@hatakuri_takagi

「リモートチームサービス」継続のためのリスクマネジメント

オフィスの様子

弊社では「リモートチームサービス banso.(旧hatakuri.)」を展開しており、クライアント企業様専属のサポートチームをつくっています。そのため、日々チームとしての機能を止めることなく、また何か変化が起きたときでも柔軟に対応できるような体制づくりが求められています。

今回のコロナ禍においても、感染拡大による環境変化にすぐに対応できるよう、事前にサービス停止リスクを洗い出し、未然の防止・軽減策、発生時の措置についてまとめておきました。

リスク要因未然防止・軽減策措置
【短期】
事業の一時停止
●近隣・社内での感染
・小学校休校・登園不可
●在宅勤務によるリスク分散
●個別感染対策、免疫強化啓蒙
●リソースの常時把握
●社内での役割調整
【中長期】
事業継続性の低下
●サービス品質の低下
●従業員のメンタル不全
●従業員の休職・退職
●カスタマーサクセスの基盤づくり・意識強化
●従業員の情報リテラシー強化
●コミュニケーション機会の設定
●定期的なストレスチェック
●事業方針の共有頻度を高める
●迅速な課題改善
●専用窓口を設け個別対応の強化

※同時に、企業継続のための資金調達や助成金の活用なども進めました。
 

状況に合わせた方針の取り決め

リスクマネジメント表をベースにしながら、都度状況の変化に合わせて方針を調整し、従業員への迅速な発信と、早期の不安解消を心掛けてきました。この3カ月の間に、計4回にわたって提示した方針を、簡単にまとめます。

状況に合わせた方針


①2月27日:全国小中学校の臨時休校要請を踏まえた方針

基本方針●在宅可能な従業員に実施を推奨することで、大人数(20人以上)が集まる状況を極力回避し、仮に感染者が出た場合でも最小限のリスクに抑える
●託児・小学生受け入れなど、可能な範囲で業務に集中できる環境を整えることで、当初の予定稼働時間を極力維持し、業務を停止させない
対応●在宅勤務への段階的移行
●少人数での小学生受け入れの実施
●WEB会議の推奨
●セキュリティルールの再浸透

この時点では、オフィス近郊での感染者が少なかったことや、通勤時の公共交通機関等の利用がなかったため、業務上差し支えのない従業員から在宅勤務への移行を進めていきました。

弊社から以前から在宅勤務制度があり、半数以上のスタッフが週2~3日程度で在宅勤務を取り入れていたため、移行における大きな混乱はなかったように思います。

一方、小中学校の臨時休校を受け、できる限り業務に集中できる体制をつくるために、弊社の保育士と連携して、少人数(10名以下)での小学生受け入れも実施しました。

オフィスの近くにある施設

※オフィスの近くにある施設を借りて実施

②4月8日:市内での感染者確認を踏まえた方針(4月16日:全国緊急事態宣言)

基本方針●職場内感染防止・感染リスク軽減のため原則在宅勤務へ移行
●本人の希望に応じて稼働時間を調整し、可能な限り業務を停止させない
対応●オフィス・託児所の利用制限(一部業務を除く)
●小学生受け入れの停止
●【希望者のみ】フレックスタイム時間の拡大(5:01~21:59)、土曜日出勤申請
●【希望者のみ】所定労働時間削減・休職申請

弊社のオフィスがある長野県上田市管内で感染者が確認されたことを受け、在宅勤務への移行強化を行いました。
それに伴い、小学生の受け入れも停止。一部の幼稚園・保育園で預入れが困難になったこともあり、子どもが家にいる環境下での勤務も避けられない状況となりました。

その中で、「日中は子どもがいて集中できない。でも可能な限り働きたい」という声があがり、本人が希望し業務上差し支えのない従業員に限り、フレックスタイム時間の拡大、土曜日の稼働を受け入れることにしました。

また「業務に集中できる環境がつくれない」「休校中の子どもたちとの時間を大切にしたい」という声も一部からあがり、希望者に対して面談を行い、1カ月単位の休職も受け入れました。

こうした変化の中で、少しでも前向きに業務に取り組めるようにと、全社総会での意識統一・ワークショップを実施したほか、オンラインランチ・飲み会など従業員主導の取り組みも生まれました。


 

③5月11日:従業員アンケートの結果をもとにした方針

基本方針原則在宅の継続
対応中長期の「事業継続性の低下」リスクへの施策強化

在宅への移行から2カ月間が経過し、従業員の中には心身疲労やコミュニケーション不足、モチベーション低下といった課題が出てきました。そこで、従業員アンケートをもとにした施策の実施に至ります。(詳細は後ほどご紹介します)

④5月18日:39県での緊急事態宣言解除を踏まえた方針

基本方針<5月20日(水)~5月29日(金)>
●オフィス近郊在住者:任意出社・在宅推奨
●遠隔在住者:居住場所の状況に応じて個別相談 <6月1日(月)~>
●オフィス近郊在住者:原則出社(通常通り)
在宅を希望する場合は、通常ルールに従い申請する
●遠隔在住者:居住場所の状況に応じて個別相談
対応以下について継続
●「業務におけるチーム・個人のパフォーマンスの最大化」という観点での在宅勤務申請の推奨
●WEB会議の推奨
●フレックスタイム時間の拡大・土日出勤申請

弊社オフィスのある長野県内での緊急事態宣言解除と、直近近郊で感染者が出ていないことを受け、6月から従来通りの運用に戻していく方針を決めました。

一方で、期間中に実施した在宅勤務やフレックスタイムの拡大によって生産性向上やスキルアップにつながった従業員も多かったため、引き続き「業務におけるチーム・個人のパフォーマンスの最大化」を念頭に、在宅勤務申請を推奨していくことにしました。


従業員アンケートで変化を定点観測

<実施日>
①2020年4月6~4月9日
②2020年4月30~5月8日
③2020年5月29~6月10日

アンケートでは、主に「今後の働き方に関する希望調査」「自身やプライベート面での変化」「仕事面での変化」などについて確認しました。その結果の一部をご紹介します。

自身やプライベート面の変化

4月の段階では比較的心身や体調不良が多かったものの、ゴールデンウィーク休暇などを経て、若干減少傾向が見られました。一方で、5月にはコミュニケーション不足を感じる人が増えています。6月に従来通りの運用に戻ったことで、コミュニケーション不足が解消されたり、子どもの学校も始まったりしたことから、以前よりも前向きに過ごす人が増えたと考えられます。

従業員アンケート結果のグラフ1


仕事面の変化

在宅勤務に移行したことで、慣れていない従業員からは「まわりに迷惑が掛かっていないか不安」という声が多く出ました。一方で、在宅勤務に慣れている従業員は、特に大きな変化を感じずに業務を遂行できていたようです。在宅勤務での工夫などを共有する、不安感を埋めるためのフォローをするという点も必要だと感じました。

従業員アンケート結果のグラフ2



アンケートから生まれた取り組みと効果

アンケートの結果から、大きく「子育てとの両立」「心身疲労」「コミュニケーション不足」が課題になっていることが分かりました。こうした課題を改善するため、以下の施策を実施しました。

①子育てとの両立のための施策

従業員の約80%が小学校以下の子育て中の女性であることから、やはり「子育てとの両立」を課題に感じるスタッフが多数いました。子どもたちの休校や登園自粛が続く中、少しでも負荷を軽減したいという思いで生まれたのが、「リモート託児」です。

リモート託児

リモート託児とは、Web会議ツールを使って、自宅にいる子どもに遠隔で託児をすること。はたらクリエイトに所属する保育士が、パソコンの画面越しでも楽しめるようなプログラムを考え、従業員の子どもたちと時間をともに過ごしました。

リモート託児を通して、従業員が集中できただけでなく、子どもたちもコミュニケーションをとる良いきっかけとなったようです。

今後も同じような出社や預入れが困難となるような事態が発生した場合に、このノウハウをいかして、外部の皆さまへのご提供も検討しております。

②心身疲労改善のための施策

悩みを気軽に相談しやすいようにするため、オンラインで社内の保健師や保育士に相談できる「はたクリ保健室」を開設しました。(他の施策で課題が解消できていたのか、期間中の利用者はいませんでしたが、継続していきたいと思います)

また、オンラインでのラジオ体操(5分程度)を週3回定期開催。運動不足の解消や、仕事モードに切り替えるための気分転換につながったようです。

はたクリ保健室


③コミュニケーション促進・モチベーションアップのための施策

アンケートで、「いま一番コミュニケーションを取りたい相手」や「現状の課題を踏まえてやってみたいこと」を確認しました。

その中で、たくさんの提案があがってきたため、全員で同じことをやってもらうのではなく、「チームで話し合って、課題解決のためにやることを決める機会」を設けることに。極力意向を踏まえたメンバー構成で4~6名ずつの15グループに分け、それぞれ1時間の業務時間内で「リモート〇〇」を実施してもらいました。

<実施された「リモート〇〇」の一部>
●リモート相談室
●リモートお茶会
●リモートダイエット
●リモートオセロ大会
●リモートリフレクソロジー
●リモートアートセラピー など

実施した内容はChatworkで共有しあい、各チームの盛り上がりが伝わってきました。

リモート〇〇の一部の活動内容



クライアント企業様・スタッフの声

この期間中に寄せられた、クライアント企業様やスタッフの声を紹介します。

クライアント企業様からいただいた声

●普段からはたクリさんとリモートでお仕事をさせてもらっていたおかげで、在宅勤務への移行をスムーズに進めることができました。
●オンラインでのコミュニケーションの取り方など、参考にさせてもらえることが多くて助かっています。
●この事業に関わる人たちをできる限り守れるよう、アクセルを踏み続けます。みんなで変化しながら、生き残りましょう!

先が見えない状況の中、同じ「チーム」の一員として向き合ってくださったことを、とても感謝しております。この期間中少しでもお力になれていたら嬉しいですし、今後もより変化に強く、共に成長できるチームでいられるよう努めてまいります。
 

スタッフの声

●通勤時間を仕事に充てられる分、勤務時間を増やすことができました。
●在宅でも工夫次第でコミュニケーションを取りながら仕事ができて、すぐに聞けない環境だからこそ自分で考えて行動することができたと思います。
●困ったことがあってもすぐに相談できて、不安なく働けました。
●いろいろあっても、画面の向こうに「同じゴールを目指す仲間がいる」と思うと頑張れました。
●出社できなかった期間中、早くまた出社したいと思える会社でした。
●はたらクリエイトだからこそできる働き方だと再認識して、感謝しています。

それぞれ課題にぶつかりながらも、協力し合いながら試行錯誤を繰り返し、働き方やコミュニケーションの仕方を見直すきっかけになったようです。こうした状況の中でも、真摯に業務を進めてくれたスタッフに、改めて感謝を伝えたいと思います。


最後に…

この未曾有の状況で、どのように対応すべきか日々迷うことも多くありました。一方で、「サービスビジョンである ”共に成長するチームをつくる” とはどういうことなのか」を再度従業員とともに考えていくきっかけになったと感じています。

今回の経験を糧に、引き続きクライアント企業の皆さまに伴走させていただきながら、変化に強く、共に成長できるチームづくりに努めてまいります。

最後に、新型コロナウイルス感染により亡くなられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、感染拡大防止に尽力されてこられた医療関係者をはじめ、わたしたちの生活を支えてくださっているすべての皆さまに、深く感謝を申し上げます。

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ライタープロフィール

取締役CCO たまに迷子になる舞台監督

高木 奈津子
株式会社はたらクリエイト取締役COO /株式会社ten-to. 代表【2021年6月~】 新卒で東証一部の人材総合会社に入社し、求人広告の法人営業や、就職フェアの企画・運営を経験。2015年に長野県上田市に移住し、株式会社はたらクリエイトを起業。 個々が本来持つ力を引き出し、いかしあう組織づくりと制度設計、事業開発を行っている。