リモートチームサービス hatakuri ができるまで


 

こんにちは。
株式会社はたらクリエイト取締役COOの高木です。

長野県上田市・佐久市に拠点を持ち、約100名の従業員がいる弊社では、2018年から「リモートチームサービス hatakuri」を展開しています。今回は、このサービスがどのように生まれ、育ってきたのか、これまでの変遷をご紹介します。

この変遷は決して「正解」と言えるものではありませんが、それも含めて、これから地方での起業や新規事業を検討されている方に、少しでも参考になれば幸いです。

高木 奈津子|たかぎ なつこ
長野県上田市で株式会社はたらクリエイトを設立。取締役COO、キャリアコンサルタント。出産・介護・パートナーの転勤等を理由に、仕事にブランクがある約100人の女性を雇用し、キャリア再構築の仕組みづくり・組織開発に取り組む。共に創る / 補い活かし合う / リモートチーム / 仕事を楽しむ人を増やす
Twitter:@hatakuri_takagi

 

リモートチームサービス hatakuriとは

リモートチームサービス hatakuri」とは、社外に専属のチームをつくり、業務をアウトソーシングできるサービスです。雇用でも派遣でもない、けれど社内部署のような感覚で業務を依頼できる、新しい人材確保の仕組みとして、主に首都圏の企業様にご活用いただいています。

ご依頼いただける業務は、Webメディアのコンテンツ制作のほか、SNS運用やレポート作成、採用アシスタント、業務効率化のためのシステム構築など多岐に渡ります。サービスビジョンは、「共に成長するチームをつくろう」。クライアント企業様の事業成長に伴走できる、チームづくりを目指しています。
 

サービスが生まれ・育つまでの道のり

「リモートチームサービス hatakuri」という名称でご提案を始めたのは、2018年の9月頃。今では約25社のクライアント企業様から、月間60件以上の案件を継続いただけるようになりましたが、サービスが生まれ・育つまで、約5年の年月がかかりました。

その道のりを、簡単に振り返ってみたいと思います。


 

①コミュニティ形成期(2015年4月~2017年6月)

わたしたちは、もともと一般社団法人ループサンパチという法人で、上田市内3店舗のコワーキングスペースを運営していました。2015年4月に2店舗目として立ち上げたのが、現在の上田オフィスである、「HanaLab.UNNO(ハナラボ ウンノ)」です。「女性と社会をつなぐ」をコンセプトに、託児所やキッチンスタジオを併設しています。
 

立ち上げから2年間は、コワーキングスペースの認知度を上げ利用者を増やすための、イベント開催やランチ提供、合同企業説明会の開催、クラウドファンディング、子育てサークルへの働きかけなど、様々なことを実践しました。

個人や企業だけでなく、行政や教育機関などとの連携も活発的に行い、様々な人が行き交う中で「いかしあう文化」が醸成されてきたように思います。
 

②探索期(2015年6月~2017年6月)

コミュニティをつくっていくなかで、地域には女性の起業家やフリーランスは少ないものの、「出産・子育てを機に仕事を辞めて、ブランクがあるけど働きたい」「子育ても大事にしながら、仕事を通して社会とつながりを持ちたい」という女性がとても多いことに気付きます。

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そこで、子育て中の女性たちがチームになって仕事を受ける「ママカラ」という仕組みを作りました。

コワーキングスペースがハブとなって仕事を受託し、それを個々の登録メンバーに割り当てて、一連のディレクション・フォローアップ研修・クオリティ管理を行うというもの。現在の体制との一番の違いは、メンバーが「雇用関係にない」ことです。
 

 

ママカラでは、常時15~20名ほどのメンバーが登録し、いただいた業務を分担しながら進めました。

ママカラ時代にお受けしたお仕事の例
・音声データの文字起こし ・営業リスト作成 ・キャンペーンの当選者リスト作成・商品発送 ・社内研修資料の更新 ・企業ブログ代行 ・チラシ・ポスター・カードデザイン ・食品メーカーとの食育イベントの企画・運営 ・上田市の結婚~子育てポータルサイト・アプリの企画・運営 ・情報冊子の配達 ・求人記事取材・執筆・応募者管理 ・システムテスト・動作検証・検品作業 ・ポータルサイトへの情報登録 ・広告原稿の校正・校閲 ・ECサイトの更新 ・メルマガ制作・配信設定 ・会議資料の作成・封入・発送 ・ロゴ・名刺デザイン ・プリンターアプリのスタンプ作成 ・プリンターを活用したクラフトの企画・制作・撮影 ・子育て関連施設取材記事制作 ・リフォーム体験記事作成 ・掃除・家事グッズ商品モニター ・イベント集客・運営フォロー ・商品の物撮り・切り抜き ・製造業の動画マニュアル作成 ・紙アンケートのデータ集計 ・稲穂のお米を数える仕事 など、2年間で約120案件

 
このときは「地元企業と女性のマッチング」を目指していたので、80%以上の仕事を長野県内の企業様からいただいていました。

立ち上げ当初は、「実績がない」「ブランクでスキルが追いつかない」「時間をうまくコントロールできない」などの課題が山積。「子育て中の女性集団」というだけで「支援」のニュアンスが色濃く低価格になりがちで、やっとの思いで仕事をいただいてきても、時給換算すると最低賃金を下回るような収入しか得ることができませんでした。

それでも、このメンバーでやれそうなことは何でもやる。
いただけたお仕事には徹底して取り組み、期待を超える。

この期間に、多様な業務を愚直に積み重ねたことで、「業務立ち上げの基礎」や「柔軟さ」が身に付いたように思います。一方で、メンバーの中には、収入の安定のしなさから家族からの理解を得られず、辞めていく人もいました。
 

③【倒産危機】選択と集中(2017年7月)

事業開始から丸2年が経った頃、「地方創生」の意味合いでいただいていた補助金の支給も終わりが見え始め、コワーキングスペースの継続的な会員獲得も困難になり、いよいよ財務危機に陥りました。それとともに約半数の従業員が退職することになり、組織も険悪状態に。残ったのは、現在の役員3名と保育士スタッフ、最後までママカラで共に走り続けてくれた数人のメンバー、そして負債でした。

「事業のすべてを続けられなくなった今、わたしたちがやるべきことは何なのか」。
当時、1店舗目のコワーキングスペースを開始してから約5年が経ち、まちの主要プレイヤー同士のつながりはある程度創出できていたので、「コワーキングスペースとしての役割はここで終えてもいいかもしれない」と考えました。

一方「子育て中の女性の社会復帰モデルづくり」は、まだ課題も多く道半ば。でも「これからの地域にとって絶対に必要な仕組みになる」と信じていました。

そうして、3店舗あったコワーキングスペースのうち、託児所付のHanaLab.UNNO以外の、2店舗の撤退を決断。「子育て中の女性の社会復帰モデル」を成り立たせていくことに、全力集中すると決めたのです。

このときから、営業先を県内から東京に切り替えました。コワーキングスペース時代の知人や前職のつながりから紹介してもらったり、企業HPから連絡して会いに行ったり、とにかく多くの人にお会いしましたが、「良い取り組みですね」で終わってしまうことも多かったように思います。

雲を掴むような感覚でしたが、これまで積み重ねたものをベースに粘り強くご提案を重ねていくなかで、ある企業様が「弊社と提携しませんか?」と連絡をくださいました。これが今も継続してお付き合いいただいている、hatakuriの1社目のクライアント企業様と出会いです。
 

④転換期(2017年8月~2017年12月)

早速クライアント企業様に「来月から、20人のライターチームを立ち上げましょう」と言っていただいたときには、「1カ月後に20人ですか…?」と内心震えましたが、この頃は藁にもすがる思いだったので、急ピッチで採用と研修を進めました。

ここまでの取り組みを通して「子育て中の女性が働きやすい場所」という印象が地域に広まっていたのもあり、採用はスムーズに進めることができたと思います。

また、これまでママカラのメンバーとは業務委託契約を結んでいましたが、ここで全員を雇用に切り替えます。(最初は主にパートタイマー)
「ビジネスとして価値を出す集団に育てていく」「この人たちに給与を払い続ける」という覚悟を持ち直す、大きなきっかけとなりました。

提携後、業務を開始してからは、
クライアントから求められることに全力で応える。
少しの背伸びを繰り返して自分たちにできることを増やしていく。

その繰り返しでした。

立ち上がるまでの期間、クライアントのみなさまにスピード・質の面で「プロ意識」を徹底的に叩き込んでいただいたからこそ今があり、感謝してもしきれません。

その後、求人広告制作やデータ整備、校閲など多種多様な業務をご依頼いただき、人数も半年で40名ほどになりました。
一方で、業務も人も一気に増えてしまったので、組織はカオス状態に。このとき、「パート側」「会社側」という大きな溝が生まれていました。
(この頃から、組織開発のための様々な制度が生まれていきました。組織の変遷については、あらためて別記事にてまとめたいと思います。)
 

⑤【株式会社化】構築期(2018年1月~2018年8月)

当初は一般社団法人のまま運営していましたが、「取引先の稟議に時間がかかる」「資金調達の面でも不利に働く」という点から、法人格を株式会社に移行しました。

ここで立ち上げたのが、今の「株式会社はたらクリエイト」です。「はたらくをクリエイトすることで仕事を楽しむ人を増やす」をミッションに定め、時代の変化にあわせた働き方を提案・体現していける組織を目指しました。

そしてここから、ご紹介などをきっかけに、クライアント企業様も2社、3社と増えていき、マーケティング支援やシステム構築など、業務の領域も徐々に広がっていきました。
 

⑥基盤確立期(2018年9月~2020年4月)

少し波がありながらもご依頼量は徐々に増え始め、事業開始から1年で50人ほどの組織になりました。しかしここまで、ご相談いただいたものに応えていくことに必死で、サービスとしての定格化が追いついていませんでした。

そこで、知り合いに声を掛け、業務委託というかたちで営業メンバー(東京在住)と広報メンバー(四国在住)に加わってもらうことに。サービス基盤の確立や企業ブランディングの面で、力を貸してもらいました。

そして、ここにきてようやく、「リモートチームサービス hatakuri」という名前が生まれます。営業体制をつくることでクライアント企業様も徐々に増えていき、スタッフのスキルや専門性も次第に高くなっていきました。

クライアント企業様からも「hatakuriさんのおかげで、事業を成長させることができた」「スピード感を持って着実に効果が出ているので嬉しい」といった声もいただけるようになり、ご提供できる価値も徐々に大きくなってきたと実感しています。

また、様々なメディアに取り上げていただいたり、HRチャレンジ大賞で表彰いただいたりしたことで認知度や信頼度を高めるきっかけとなりました。

受賞
第8回日本HRチャレンジ大賞「人材マネジメント部門優秀賞」    
メディア掲載(一部抜粋)
ハフポスト「産後離職の女性は46.9%…。子どもがいても、キャリアを積みたい そんな望みに応える職場が長野県上田市にあった。」日経DOORS「出産などで離職した女性を戦力化 はたらクリエイト」d’s JOURNAL「はたらクリエイトがつくる、地方の子育て中の女性を活かす職場」(3回連載)

 
2019年5月には、長野県佐久市にも託児所付のオフィスを立ち上げました。スタッフそれぞれが育てあい・支えあいながら、主体的に業務を進行できる人が増え、現在では約100名が働いています。
ありがたいことに、約25社のクライアント企業様から、月間60件以上の案件を安定的にご依頼いただけるようになりました。
 

⑦発展期(2020年5月~)

そして現在はたらクリエイトでは、サービス価値を一層強化していくため、3つのことに取り組んでいます。
 

(1)カスタマーサクセスの強化

「リモートチーム」として、よりクライアント企業様の事業発展に伴走できるよう、サービス内容の見直しを行っています。
現在ご利用いただいているクライアント企業様には、より効果を高めていけるように、定期的な効果検証・改善の仕組みを整えてまいります。また「リモートチーム」を持つことの価値をより感じていただけるように、弊社オフィスを開放し、研修や合宿などでご活用いただけるような企画も検討中です。

これからご検討いただく企業様には、より「リモートチーム」をつくることのイメージを持ちやすく、早い段階で効果を実感していただくための、オンボーディングの仕組みを整えております。(7月までにHPでも公開予定です)
 

(2)領域特化型サービスの強化

これまで複数の案件を複数人のスタッフで実施する中で、マニュアル化・業務進捗の可視化・DXのノウハウが蓄積されてきました。業務の切り出しだけではなく、より企業様の生産性向上や、業務効率化のご支援につなげられるサービスの準備を進めております。(7月までにHPでも公開予定です)
 

(3)新会社の設立

2020年4月に新たにグループ会社として、「株式会社TSクラウド」を設立しました。この会社では、主にGoogleのプレミアパートナーとして「G Suite」や「GCP(Google Cloud Platform)」の代理店業務を行っております。これまで「リモートチームサービス」の中でもG Suiteを活用して業務をご一緒させていただくことが多くありましたので、より業務効率化につながる活用方法等をご提案させていただけるよう、強化してまいります。
 
 

サービス立ち上げで大事にしてきたこと

コワーキングスペース時代から一貫して大事にしてきたのは、「地域にチャンレンジできる場所をつくり、自らも実践者であり続ける」ということ。トライアンドエラーを繰り返しながら、地域課題に対して「この人たちと、この場を使って何ができるのか」を探求してきました。

しかし常に自転車操業で、未熟さゆえにご迷惑をお掛けしたり、先が見えなくて思い悩んだりすることも多くありました。そんな苦しい時期に、支援者の方から「やっていることは間違っていない、やりたいことに対しての見積を誤っただけだ」という言葉をいただけたときは、身の引き締まる思いで、もう一度前を向く勇気をいただきました。

ここまで一緒に走ってくれた仲間たち、ビジネスパートナーとして真摯に向き合ってくださったクライアント企業様、陰で支えてくださった地域・自治体・ご家族のみなさまには、改めて感謝を申し上げます。

まだ未熟なところも多々ありますが、ここまでの経験を糧に、より一層「はたらくをクリエイトすることで仕事を楽しむ人を増やす」ためのチャレンジを続けてまいります。