コンピテンシーとは?面接や評価などへの活用方法や項目の作り方

コンピテンシー
 
「高い成果につながる行動特性」を意味する概念である、コンピテンシー。コンピテンシーを社内に取り入れることにより、「従業員の成長につながる」「生産性が向上する」といったメリットが期待できます。面接や人事評価などに、コンピテンシーを活用している企業も多いようです。
 
今回は、コンピテンシーの概要や社内での活用方法、コンピテンシー項目の作り方、導入する際の注意点などを紹介します。
 

コンピテンシーとは?

近年、少子高齢化による労働人口の減少や、AI・IoTの浸透による企業間の競争激化などが多くの企業にとって課題となっています。これらの課題を解決すべく、従業員全体の行動の質を高め、生産性向上を図る企業も少なくありません。そうした状況の中、「コンピテンシー」という概念に注目が集まっています。コンピテンシーの概要や生まれた背景、スキルとの違い、コア・コンピテンシーについて紹介します。
 

コンピテンシーとは、高い成果につながる行動特性のこと

「コンピテンシー(competency)」とは、高い成果につながる行動特性のこと。好成績を上げる従業員に共通する行動特性と言い換えることもできます。従業員に期待する成果は、「どのような業務を担当しているか」「チーム内でどういった役割を担っているか」によってさまざまです。そのため、職種・役割ごとに異なるコンピテンシーが求められます。
 
コンピテンシーの例としては、「相手の意見を受け入れる素直さ」や「場を和ますユーモア」といった性格、「社会の役に立つ仕事をしたい」「自分の能力を高めたい」といった動機、「新しいことへのチャレンジを大切にする」「チームワークを重視する」といった価値観などが挙げられます。可視化しやすい知識や行動、技能とは異なり、コンピテンシーは可視化しにくいのが特徴です。
 
コンピテンシーの概念図
 
コンピテンシーを定めることにより、「どのような行動を取れる人材を必要としているのか」「従業員一人ひとりにどのような行動を期待しているか」といったことを明確に社内に示すことができます。そのため、コンピテンシーを採用面接や人材育成、人事評価などに活用している企業もあります。コンピテンシーの具体的な活用方法については、後ほど紹介します。
 

コンピテンシーという概念が生まれた背景

コンピテンシーという概念が生まれた背景には、1970年代前半に米国文化情報局(USIA)が実施した職員採用選考が関係しています。
 
従来、USIAでは「IQ」や「学歴」を基準に選考を実施してきました。しかし、IQや学歴の高さがパフォーマンスの高さには必ずしも直結していなかったため、ハーバード大学のマクレランド教授率いるグループに調査を依頼。その結果、「学歴や知能は業績の高さとさほど相関はない」「高い業績を上げる者には、いくつか共通の行動特性がある」といったことが判明しました。後に、「高い成果を上げる従業員に共通する行動特性」のことをコンピテンシーと呼ぶようになります。
 

コンピテンシーとスキルとの違い

「コンピテンシー」と混同されやすいのが、「スキル」です。スキルとは、従業員一人ひとりがもっている能力・技能のこと。例として、特定の分野に関する専門知識やパソコンのタイピング能力、営業力などが挙げられます。
 
コンピテンシーとスキルは、いずれも仕事をする上で不可欠なものという点では共通していますが、成果に直結するかどうかが異なります。スキルの場合、有しているだけでは成果に直結しないとされています。一方、コンピテンシーには、成果に直結するという特徴があります。
 
例えば営業職の場合、顧客のニーズを引き出す「コミュニケーション能力」や自社の商品・サービスの魅力を伝える「セールストーク」といったスキルが求められます。しかし、それらのスキルを持っていたとしても、必ずしも好成績を上げられるとは限りません。営業職としての基礎的なスキルに加えて、「一度断られても、時間を置いて再アプローチする打たれ強さ」や「相手の反応を見てセールストークを変える判断力」といったコンピテンシーなどが必要となるでしょう。
 
つまり、「従業員一人ひとりが自身のスキルを活かし、高い成果に結びつけるために必要なもの」がコンピテンシーだと言えます。
 

コア・コンピテンシーとは?

コア・コンピテンシーとは、文字通り「中核(コア)」を担うコンピテンシーのこと。WHOが発表した『WHOグローバル・コンピテンシー・モデル』の中で紹介されたことにより、コア・コンピテンシーという概念が知られるようになりました。
 
職種・役割によって必要とされるコンピテンシーはさまざまですが、数あるコンピテンシーの中でも、組織に属する全員を対象としたものがコアコンピテンシーです。全従業員に向けたものであるため、企業にとって最も重要なコンピテンシーとされています。
 

コンピテンシーのメリットと活用方法

コンピテンシーという概念を社内に取り入れることにより、「従業員にどういった行動を期待しているのかが明確になる」「人事評価の公平性が高まる」「全従業員の行動の質が高まる」といった効果が期待できます。そのため、コンピテンシーには「従業員一人ひとりの成長」や「生産性の向上」といったメリットがあるとされています。

 
こうした効果やメリットを期待し、コンピテンシーを社内で活用している企業も少なくありません。「面接」「評価」「研修」という3つの場面でのコンピテンシーの活用方法を紹介します。
 

コンピテンシー面接

コンピテンシー面接とは、応募者の「思考」や「行動特性」をもとに、合否を判定する面接のこと。「どういった行動特性があるか」をさまざまな質問から見極めることが出来るため、応募者の本質をつかみやすいとされています。
 
「応募者の過去の経験」や「面接官の主観」により合否を判定する従来の面接では、「評価にバラツキが出やすい」「応募者の本質をつかみにくい」「面接に慣れている応募者ばかりが合格してしまう」といったことが課題となっていました。そうした課題を解決する方法として注目されているのが、コンピテンシー面接です。
 
コンピテンシー面接では、学生時代や社会人になってから「どのような行動が成果につながったのか」「具体的にどういった実績を上げたか」などを、まず確認します。その上で、「その時、どうしてその行動をしたのか」「なぜ、それをしなければいけないと思ったのか」「その経験を、今後どのように仕事に活かしていこうとしているか」などを掘り下げていくのが、コンピテンシー面接のポイントです。
 
応募者の行動特性が明らかになったら、「やるべきことを部分的・断片的に行える」レベル1から、「周囲を巻き込む影響力がある」レベル5までの5段階のどこにあるかを判断し、合否を決めます。質問内容や判断の偏りを減らすため、質問項目や5段階の判断基準をマニュアル化しておくと良いでしょう。また面接と併せて、コンピテンシーに基づく適正テストである「コンピテンシーテスト」を応募者に受けてもらうという方法もあります。
 

コンピテンシー評価

コンピテンシー評価とは、自社が定めたコンピテンシーを評価指標とする人事評価のこと。職種や役職に応じて設定した詳細なコンピテンシーをもとに人事評価を行うため、評価のブレが少なくなるとされています。
 
従来の人事評価では、「評価基準が曖昧」「評価者である上長が人事評価に慣れていない」といったことが原因で、「上長と相性の良い従業員ほど、高く評価されやすい」「従業員の性別によって、評価に差が出る」「人事評価に納得していない従業員がいる」などの課題がありました。コンピテンシー評価には、こうした課題を解決する効果が期待できます。
 
人事評価の透明性を確保し従業員の納得感を高めていくため、コンピテンシー評価では最初に、自社で定めたコンピテンシーを従業員全員に周知します。それにより、「どういう思考で、どういった行動をすることが重要か」が明確になるでしょう。人事評価の時期になったら、「目標としていた行動を実践してきていたか」「特定の行動を起こす際に必要となる思考を身に付けられたか」といった基準で評価を行います。また、コンピテンシー評価を行う中で高い成果を生み出す「新たなコンピテンシー」が見つかったら、積極的に評価指標に取り入れていくとなお良いでしょう。
 

コンピテンシー研修

コンピテンシー研修とは、「どういった思考のもと、どのような行動をすれば高い成果を上げる従業員になることができるか」をテーマにした研修のこと。従業員一人ひとりの成長を促し、チームや組織の生産性向上に直結する研修とされています。
 
コンピテンシー研修では、最初に「実際に高い成果を上げている従業員の行動特性」を具体的に示します。その上で、「こういう思考ができるようになる」「こういう行動を起こせるようにになる」といった明確な目標を従業員一人ひとりに設定してもらいましょう。自ら目標を設定することで、積極的・自発的な行動が促され、従業員の成長へとつながります。加えて、「研修で決めた目標をどの程度達成できているか」をフォローアップ研修や上司と部下との1on1ミーティングなどで定期的に確認することで、コンピテンシー研修の効果をより高められるでしょう。
 

自社独自のコンピテンシー項目・モデルの作り方

企業の規模や従業員の年齢構成、業種などによって「どういったコンピテンシーが必要か」はさまざまです。そのためコンピテンシーを社内で活用する際には、「具体的にどういった思考・行動が必要か」という「コンピテンシー項目」を自社で独自に定める必要があります。
 
自社独自の「コンピテンシー項目」や、コンピテンシー項目を具体的な人物像に落とし込んだ「コンピテンシーモデル」の作り方について、順を追って紹介します。コンピテンシーの項目の一覧を例として載せているので、そちらも参考にしてみて下さい。
 
コンピテンシーのフロー図
 

フロー①:高い成果を上げている従業員へのヒアリング

「どの従業員が高い成果を上げているのか」は分かっていても、「その従業員がどうして高い成果を上げることが出来ているのか」までは把握しきれていないこともあるでしょう。そのため、自社独自のコンピテンシー項目・モデルを作る際、まずすべきなのが高い成果を上げている従業員へのヒアリングです。
 
コンピテンシー項目・モデルは職種・役割ごとに作成するのが一般的なため、ヒアリングも職種・役割ごとに実施します。「普段から、どういう姿勢で仕事に臨んでいるか」「何か行動を起こす際、どうしてその行動をする必要があると思ったのか」「何かを決断する際、他の選択肢も検討したか」といったさまざまな質問をし、高い成果を上げている従業員の行動特性を洗い出しましょう。
 

フロー②:傾向分析をもとに、コンピテンシー項目の原案作成

次に、ヒアリング結果をもとに、「高い成果を上げる従業員の思考・行動にどういった共通点があるのか」傾向を分析します。分析結果をもとに、職種・役割ごとにコンピテンシー項目・モデルの原案を作成しましょう。
 
原案の作成後には内容の検討や明文化が必要となります。そのため、コンピテンシー項目の原案を作る際は、できるだけ具体的なものをいくつか考えておくと良いでしょう。
 

フロー③:企業理念やミッション・ビジョン・バリューとの照らし合わせ

企業の成長につなげるためには、コンピテンシー項目と企業の目指すべき方向性が合致していることが重要です。そのため、コンピテンシー項目の原案が固まったら、企業理念やミッション・ビジョン・バリューとの照らし合わせをしましょう。もし、企業理念やミッション・ビジョン・バリューと矛盾する項目があった場合には、原案から除外します。

 

フロー④:コンピテンシー項目・モデルの策定・明文化

企業理念やミッション・ビジョン・バリューとのすり合わせが済んだら、コンピテンシー項目・モデルを策定、明文化します。採用や人事評価、人材育成の際の基準として活用できるよう、コンピテンシー項目は達成度や習熟度によってレベル分けしておくと良いでしょう。
 
コンピテンシー項目をもとにコンピテンシーモデルを作る際は、「実在する従業員にどの程度近付けるべきか」を検討することが重要です。コンピテンシーモデルには、「企業が求める理想の人物像」から考える理想型モデル、「実在する従業員の人物像」をもとにした実在型モデル、「理想型と実在型を融合」させたハイブリッド型モデルの3タイプがあります。企業によって、どのタイプのコンピテンシーモデルを策定するかはさまざまですが、理想型モデル・実在型モデルの良いとこ取りをしたハイブリッド型モデルを選択する企業が多いようです。
 

【例】コンピテンシーの項目一覧

コンピテンシー項目一覧の例をまとめました。

対象者 項目 内容
全従業員 誠実さ 仕事にも人にも、真面目に誠実に向き合っている
思いやり 仕事を共にする相手の立場・気持ちを理解した上で、行動している
柔軟思考 状況の変化に対して、臨機応変に対応している
チャレンジ性 高い目標や斬新なテーマの実現に向け、果敢に取り組んでいる
ビジネスマナー 常に、ビジネスマンとして恥ずかしくない立ち振る舞いをしている
営業職 親密性・ユーモア 感じが良く、その場の雰囲気を和ますユーモアがある
傾聴力 相手の立場に立って、相手の話に最後まで耳を傾ける
プレゼンテーション力 相手に伝えたい内容を、的確に説明している
クリエイティブ職 視点の広さと深さ 先見性、革新性を持って課題を把握し、対応方法を考える
アイデア思考 客観的事実や情報の活用方法を、新たな発想で考える
論理的思考 物事を客観的に捉えた上で、自分の考えを論理的に展開する
 

管理職
 
 
 
 

理念・方針の共有 経営方針や新しい業務の進め方などを、部下・後輩に分かりやすく共有する
部下・後輩の育成 部下・後輩に仕事を進める上での気付きを与え、仕事を通じて部下の人間性を高める
業務管理力 仕事の流れや分担、進捗状況などを確実に把握し、業務効率化を図る
コミュニケーションの重視 部下・後輩とより良い信頼関係を築くため、コミュニケーションを重視する
権限の委譲 やる気があり意欲的な部下・後輩に、思い切って仕事を任せる

上記の一覧はあくまで例です。一覧を参考にしつつ、自社の現状にあったコンピテンシー項目を作りましょう。
 
 

企業がコンピテンシーを導入する際に注意すること

コンピテンシーを導入する際には、いくつか注意すべきことがあります。企業がコンピテンシーを導入する際の注意点を紹介します。
 

注意点①:社内に浸透させる必要がある

コンピテンシーは、従業員一人ひとりが理解・納得してこそ、価値があるものです。そのため、策定したコンピテンシー項目・モデルは全従業員に共有し、社内に浸透させる必要があります。浸透させる方法としては、「部署ごとに、コンピテンシー項目を貼りだす」「コンピテンシーを導入する前に、説明会を開催する」といった方法が挙げられます。併せて、「コンピテンシーが浸透しているかどうか」定期的に各部署・チームでの運用状況を確認すると良いでしょう。
 

注意点②:完璧に満たす人はほとんどいないことを理解する

コンピテンシー項目は多岐に渡ります。そのため、それらを完璧に満たす人はほとんどいないということを理解することが重要です。チームや組織の力を高めていくためには、「一人ひとりが能力を高める」ことに加え、「メンバー同士が互いの強みを伸ばし、弱みを補い合う」ことも必要とされています。メンバー同士が互いの強み・弱みに気付くための方法の1つとして、コンピテンシーを活用するのが望ましいでしょう。
 

注意点③:定期的に見直す必要がある

企業を取り巻く環境は常に変化しているため、コンピテンシー項目・モデルを長年変えずにいると、違和感を覚える可能性があります。時代遅れとならないよう、定期的にコンピテンシーの見直しを行いましょう。また、自社が重点的に取り組む事業や、市場における競合他社とのポジショニングなどが変化した際にも、見直しが必要とされています。見直す際は、現場の声を反映できるよう、従業員にヒアリングを行うと良いでしょう。
 

コンピテンシーを活用し、生産性を向上させよう

「高い成果につながる行動特性」を意味するコンピテンシーは、採用や人事評価などに活用することができます。コンピテンシーを社内で活用する際には、まず「高い成果を上げている従業員へのヒアリング」や「企業理念やミッション・ビジョン・バリューとの照らし合わせ」などにより、自社独自のコンピテンシー項目・モデルを策定しましょう。コンピテンシーを導入する際には、「社内への浸透」や「定期的な見直し」なども必要です。
 
コンピテンシーを活用し、チームや組織の生産性向上を図ってみてはいかがでしょうか。