アジリティとは?組織のアジリティを向上させる方法や成功事例

アジリティ
 
「機敏性」や「敏しょう性」を意味するアジリティ。もともとはスポーツ用語でしたが、社会の不確実性・不透明性が増してきたこともあり、ビジネスの場でも使われるようになってきました。
 
「アジリティという言葉を初めて知った」「これから自社のアジリティを高めていきたい」といった経営者やマネージャーの方も多いのではないでしょうか。今回は、アジリティの概要や注目されている背景、アジリティのある組織の特徴、向上させる方法などを事例を交えながら紹介します。
 

アジリティとは「機敏性」「敏捷性」のこと

アジリティ(Agility)とは、「機敏性」「敏しょう性」を意味する言葉です。
 
もともと、サッカーやバスケットボール、格闘技といったスポーツの用語として使われていました。スポーツにおいては、「チームや対戦相手の動きを瞬時に判断し、機敏に反応できる能力」のことをアジリティと定義しています。
 
また、「ドッグ・アジリティ(dog agility)」と呼ばれる犬の障害物競争もあります。人とと犬が息を合わせながら、制限時間内にコース上に設置された障害物を次々とクリアしていく競技として、愛犬家の間では知られているようです。
 
このように、以前から「アジリティ」という言葉自体は使われてきました。しかし近年では、「ビジネス」という新しい視点から、アジリティに注目が集まっています。
 

アジリティが注目されている理由

近年、AIやIoTといった技術革新の浸透により、「市場」や「企業を取り巻く環境」は急速に変化しています。「これまでのビジネスモデルが通用しなくなった」「目まぐるしく変化する状況に対し、速やかに対応する必要がある」と感じている経営者やマネージャーの方も多いのではないでしょうか。
 
こうした状況をビジネス用語では、「VUCAの時代」と呼んでいます。VUCAとは、「Volatility(激動)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(不透明性)」の頭文字を取った言葉のこと。不確実性・不透明性の高い時代を指す言葉として、2010年頃からビジネスシーンで使われるようになりました。
 
企業を取り巻く環境が目まぐるしく変化している「VUCAの時代」においては、「瞬時に的確な判断をし、行動に移せるかどうか」が、企業の生き残りの鍵です。そのため、「ビジネスにおけるアジリティ」に注目が集まってきています。
 

アジリティ(機敏性)とクイックネス(俊敏性)は異なる

「速さ」を表す言葉には、「アジリティ」の他に、「スピード(Speed)」と「クイックネス(Quickness)」もあります。スピードは「速度」としての速さであるため、アジリティとは全く別物とイメージしやすいでしょう。しかし、クイックネスは「状況への対応」の速さであるため、アジリティと混同されがちです。アジリティとクイックネスの違いについて紹介します。
 

アジリティとクイックネスの違い

クイックネスとは、「俊敏性」のこと。「いかに早く行動できるか」「刺激に対して、素早く反応できるか」といった意味合いの速さを指す言葉として使われています。アジリティとクイックネスは、「対応の速さ」という点では共通していますが、「前提として、進むべき方向やゴールが決まっているか」「判断を伴うかどうか」が異なります。
 
クイックネスの場合、前提として、進むべき方向やゴールが既に決まっています。そのため純粋に、「ゴールに向け、いかに素早く行動・対応できるか」が重要です。その際に「判断」は求められません。
 
一方、アジリティの場合には、進むべき方向やゴールの選択肢は複数ある状況です。そのため、「変化をどう読み解き、いかに素早く対応できるか」「最適な答えをいかに早く見つけ出し、行動できるか」が鍵となります。的確に「判断」した上で、素早く行動することが求められます。
 
アジリティとクイックネスは全く別物というわけではありません。クイックネスに「判断」という軸を組み合わせたものがアジリティだと理解すると良いでしょう。
 
アジリティとクイックネスの違い
 

ビジネスにおけるアジリティとは

ビジネスにおけるアジリティとは、企業経営や組織運営を進めていく際に直面する環境変化に対し、即時に判断・対応していくこと。「VUCAの時代」と言われる現在、企業を取り巻く環境は目まぐるしい速さで変化しています。そうした状況の中、「世の中のニーズ」や「取引先の動向」「チームのモチベーション」「従業員一人ひとりの能力」などさまざまな観点から企業として最善の解決策を導き出し、迅速に対処する能力できる能力こそが、ビジネスにおけるアジリティです。
 
経営コンサルタントでローランド・ベルガー日本法人の会長を務めている遠藤功氏は、『THE21』2016年2月号の中で、ビジネスシーンで企業が成長し続けるために必要なのは、「俊敏性(クイックネス)ではなく、敏しょう性(アジリティ)だ」と述べています。こうした有識者の発言からも分かるように、今やアジリティは、現代の企業にとって必要不可欠なものとされています。
 

アジリティのある組織の特徴

アジリティのある組織には、いくつかの共通する特徴があります。アジリティのある組織の特徴を紹介します。
 

特徴①:組織の方向性が明確で、従業員が目的意識を持っている

VUCAの時代では、「変化」は不可避と言えるでしょう。アジリティのある組織では、「変化は必ず起こる」と考えられています。そのため、変化が起こった際の判断基準として、組織としての方向性を明確にしているという特徴があります。組織としての方向性が従業員にも浸透しており、従業員はみな同じ目的意識を持っているというのも、アジリティのある組織の特徴の1つです。
 

特徴②:情報網を広く張り、情報収集をしている

的確な判断を迅速に行う際には、前提として、さまざまな情報を集めておくことが必要です。変化に迅速に対応すべく、アジリティのある組織は最新の情報を敏感に拾い上げる能力に長けています。そのため、常に情報網を広く張り、「競合他社の動向」や「市場・消費者ニーズの変化」といった経営判断をする上で必要となる情報を積極的に収集しているという特徴があります。また、社内での情報共有を徹底している組織も多いようです。
 

特徴③:組織の置かれている現状を把握している

組織を取り巻く環境の変化に対応するためには、情報収集を行った上で、「組織が今、どのような状況下にあるか」を客観的に判断することが重要です。アジリティのある企業は、状況を客観的に判断することの重要性を認識しています。そのため、組織の置かれている現状を常に把握しているということも、アジリティのある組織の特徴の1つに挙げられます。
 

特徴④:従業員のコミュニケーションが活発である

VUCAの時代においては、「これまで経験したことの無いような変化」に対する対応方法を考える必要があります。アジリティのある組織では、時代の変化に対応すべく、従業員の柔軟な発想を大切にしています。1人では良い方法が浮かばない場合でも、従業員同士が知恵を出し合うことで最善な方法が見つかることもあるでしょう。そのため、アジリティのある組織には、従業員同士のコミュニケーションが活発に行われているという特徴があります。
 

特徴⑤:最適な判断をした上で、迅速に行動できる

アジリティのある組織は、「的確な現状把握」や「従業員同士のコミュニケーションにより生まれる柔軟な発想」などに基づき、変化に対する最適な判断をします。その上で、自分たちが決めたゴールに向かって、迅速に行動できるというのも、アジリティのある企業の特徴です。そうした特徴があるため、アジリティの高い組織には、「自律的に行動できる、リーダーシップのある人材」が集まりやすいとされています。
 

アジリティを向上させるための方法

組織のアジリティを高めるためには、どのようなことが必要なのでしょうか。アジリティを向上させるための方法を紹介します。
 

方法①:業務プロセスの可視化と見直し

歴史の長い企業や大企業などでは、過去に策定した業務プロセスに沿って現在でも業務が行われているところもあるかもしれません。アジリティを向上させるためには、「業務プロセスが環境変化に対応しやすいものになっているか」を確認することが重要です。
 
そのため、まずは業務プロセスの洗い出し・可視化を行います。現在の業務プロセスが明らかになったら、「各種申請を、紙での提出からインターネット上でのフォームでの提出に変更できないか」「短縮できそうな承認ステップがないか」など、業務プロセスを見直しましょう。業務プロセスの可視化と見直しを行うことにより、業務の効率化も期待できます。

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方法②:情報共有やコミュニケーションに関するツールを導入する

組織のアジリティを高めるためには、社内での情報共有や従業員同士のコミュニケーションを活発にすることが不可欠です。そのために、ITツールの導入を検討しましょう。
 
ITツールの例としては、情報共有や従業員同士のコミュニケーションを円滑にするグループウエアや、メッセージ送信にかかる時間を短縮するチャットツール、遠隔地からの会議参加を可能にするWeb会議システムなどが挙げられます。ITツールの活用により業務にかかる時間を削減でき、生産性向上にもつながるでしょう。

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方法③:従業員に権限移譲する

組織としてのアジリティを高める際には、「従業員一人ひとりのアジリティが高いかどうか」も鍵となります。企業によっては、従業員一人ひとりの役割分担・責任の範囲が明確に定義しているところも少なくないでしょう。しかし、従業員のアジリティを高めていくためには、従業員への権限移譲により、個人の裁量で業務を進められる範囲を広げていく必要があります。従業員の活躍の場を広げることは、仕事のやりがいや従業員エンゲージメントの向上にもつながるでしょう。

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方法④:企業の経営理念、ミッション・ビジョン・バリューの浸透

従業員に権限を移譲することにより、「判断基準が分からない」「自分の考えた対応方法が合っているのか自信がない」といった疑問の声が従業員から上がることが考えられます。従業員に判断基準を示していないと、現場や組織に混乱を招く可能性があります。
 
そうした事態を避けるため、必要となるのが、企業の経営理念とミッション・ビジョン・バリューの浸透です。「組織としての存在意義は何か」「従業員は日々、どのようなことを意識して行動していくのか」といった明確な指針を示し、それを社内に浸透させることにより、従業員は迷うことなく最善の対応方法を選択できるようになるでしょう。

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方法⑤:心理的安全性を高める

「自分の意見を出しづらい」「周囲に遠慮してしまい、本音を出しづらい」といったメンバーも、中にはいるでしょう。そのため従業員に権限を移譲する際には、心理的安全性を高めることも重要です。心理的安全性とは、「従業員一人ひとりが安心してかつ自由に発言・行動できる状態」のこと。心理的安全性を高めることで、従業員一人ひとりは自信を持って決断・行動できるようになり、アジリティが向上するでしょう。

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アジリティを向上させている企業事例

実際に、アジリティを向上させている企業の事例を紹介します。
 

株式会社はたらクリエイト

長野県上田市でリモートチームサービス「banso.(旧hatakuri.)」を展開している株式会社はたらクリエイトでは、アジリティを向上させるためにさまざまな取り組みを行っています。
 
例として、スタッフ一人ひとりの稼働時間・生産性の可視化MISSION・VISION・VALUEの浸透を図る取り組み心理的安全性の向上につながる社内制度、チャンネルやWeb会議システムといったITツールの活用などが挙げられます。こうした取り組みにより、アジリティや従業員エンゲージメントが高まり、生産性向上につながりました。

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アジリティを高め、変化に強い企業を目指そう

不確実性・不透明性の高い「VUCAの時代」である現在、企業にとって重要なのは、変化に対して迅速に判断・行動する「アジリティ」を高めていくことです。アジリティのある組織では、組織の置かれている現状を把握できたり、最適な判断に基づき迅速に行動できたりなどするとされています。
 
ITツールの導入や従業員への権限移譲といった取り組みを行うことによりアジリティを高め、変化に強い企業を目指してみてはいかがでしょうか。

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ライタープロフィール

高木 奈津子

取締役COO・キャリアコンサルタント たまに迷子になる舞台監督

高木 奈津子(Takagi Natsuko)

長野県上田市で株式会社はたらクリエイトを設立。取締役COO、キャリアコンサルタント。出産・介護・パートナーの転勤等を理由に、仕事にブランクがある約100人の女性を雇用し、キャリア再構築の仕組みづくり・組織開発に取り組む。伴走 / ともにつくる / いかしあう / 仕事を楽しむ人を増やす
Twitter:@hatakuri_takagi