【実施報告】長野県100人コーチングプロジェクト~100人へのコーチング無償提供と長野県知事とのシンポジウムを開催~

こんにちは、コーチの本郷です。はたらクリエイトでは、長野県在住者(移住検討者を含む)100人を対象にコーチング(オンライン)を無償で提供する「長野県100人コーチングプロジェクト」を実施しました。
今回はプロジェクトの実施結果や、プロジェクトに後援いただいた長野県知事・阿部守一氏と共に行ったシンポジウムについてご報告します。

プロジェクトの内容

長野県100人コーチングプロジェクトでは、「100人へのコーチング提供」と、「長野県知事とのシンポジウム開催」の2つを行いました。

※実施にあたり、長野県や上田市、AREC(浅間リサーチエクステンションセンター)にも後援いただくなど、たくさんの方にご協力いただいています。

【4月~6月】100人へのコーチングの提供

2021年4月~6月にかけて、長野県の在住者と移住検討者100人を対象に、オンラインでコーチングを提供しました。

オンラインコーチングの概要

コーチを担当したのは、はたらクリエイトで働きながら、半年間コーチングを学んできたメンバー20名。結婚・子育て・移住・転職…様々なライフステージの変化に向き合いながら、新たなキャリアに挑戦してきたメンバーです。一人ひとりのプロフィールを公開して、申込みの際に希望するコーチを選択できるようにし、コーチングが初めての方でも安心して利用できるように心掛けました。

コーチを担当したスタッフ

長野県コーチングプロジェクト

【7月】長野県知事とのシンポジウム開催

プロジェクトに後援いただいた長野県の知事・阿部守一氏にもご参加いただき、「長野県100人コーチングプロジェクト  シンポジウム」をオンラインで開催。アンケート結果をもとに、「長野県でのコーチングの可能性」についてコーチメンバーから知事へ提案を行い、意見交換をしました。

プロジェクトを実施したきっかけや想い

プロジェクトを実施したきっかけや、そこに込めた想いについてご紹介します。

「グッドキャリア企業アワード2020」の受賞

きっかけは、厚生労働省「グッドキャリア企業アワード2020」の受賞でした。3月に「グッドキャリア企業アワード」の受賞報告で知事を表敬訪問し、プロジェクトの提案をさせていただきました。

知事を表敬訪問

はたらクリエイトで育んできたものを地域に還元したい

はたらクリエイトでは、ミッションである「はたらクリエイトをクリエイトすることで仕事を楽しむ人を増やす」ことを、まずはスタッフ一人ひとりが体現していけるように、「コーチング」を組織に取り入れてきました。それによって、「主体的なキャリア構築」「働き方の多様性」「いかしあう組織風土」が育まれ、今回のアワード受賞にもつながっています。そして、育んできたものを「コーチング」を通して地域にも還元したいという想いから生まれたのが、「長野県100人コーチングプロジェクト」です。

コーチング届けるための広報活動

これまでコーチングを利用したことがない、長野県に在住・移住検討中の方に届けるため、様々な角度から広報活動を行いました。
その結果、2カ月間で100人の方からお申込みいただき、その85%がコーチングを初めて受ける方でした。

県内の子育て・就業・移住関連施設へのチラシの配布(3000枚)

コーチングプロジェクトのチラシの配布

地元紙や首都圏メディアへの掲載

※上記以外にも、企業会員様へのメルマガ配信や、口コミでのご紹介など、たくさんの方にご協力いただき、誠にありがとうございました。

メディア掲載

コーチング利用者のアンケート結果

ここでは、コーチングの前後に利用者の方からいただいたアンケート結果の概要をご紹介します。

利用者の属性(性別・年齢・居住地など)

利用者のうち、8割が女性でした。

コーチング利用者のアンケート結果1

年齢は30代~40代が約7割を占めるという結果に。

コーチング利用者のアンケート結果2

中でも、「子育て中の女性」が約6割と、最も多い属性となりました。

コーチング利用者のアンケート結果3

居住地は、長野県の方が多かったものの、東京都や神奈川県在住など、県外からの申込みもありました。

コーチング利用者のアンケート結果4

相談テーマ

相談内容で最も多かったテーマは「キャリアの悩み(転職・求職)」に関する悩みで61%でした。

コーチング利用者のアンケート結果5

「子育て中の女性」で絞ってみても、同様に「キャリアの悩み(転職・求職)」が63%で最多という結果になりました。

コーチング利用者のアンケート結果6

子育て中の女性が「自己投資」にかける月額

「自己投資にかける月額」についての質問で最も多かった回答は「5,000円以下」で47.6%でした。続いて「現状ほぼ投資していない」という方が28.6%いました。

コーチング利用者のアンケート結果7

アンケート結果から見えてきたこと

アンケート結果から、「キャリアに関する悩み」を抱える「子育て中の女性」からのお申込みが最も多かったことがわかりました。子育てしながら、「仕事」「お金」「時間」を自分の意志だけで選択することが難しく、それぞれのバランスに悩んでいる方が多くいました。今回の傾向は、プロジェクトを運営するはたらクリエイトの特性(子育て中の女性が多い)も、影響しているかもしれません。

申込者から寄せられた声

コーチングを受けた利用者からは以下のような感想が寄せられました。

・「答えは自分の中にある」ということを、感覚として実感できました。自分の中にあった気持ちを吐き出すことができました。
・コーチと一緒に「自分を知る・省みる・気付く」という対話を繰り返すことが、私の心と生活を豊かにすることにつながると感じました。
・客観的に自分のことを知る機会になりました。気づいていたけど抑えてきた気持ちとどう向き合うか、これからのテーマが見つかった気がします。

1時間という限られた時間の中でも、自身の変化や気づき、コーチングを受けることの価値を感じていただけたようです。

今後私たちが展開したいコーチングをシンポジウムで提案

コーチングの提供を経て、「今後私たちが展開していきたいコーチング」について、コーチメンバーで検討。その内容をシンポジウムで知事へ提案し、意見交換を行いました。シンポジウムの流れは、以下の通りです。

①コーチングの提供結果について報告

利用者からのアンケート結果や寄せられた声、コーチメンバーの感想などを報告しました。

シンポジウムの様子1

対象者別コーチング企画の提案

続いて、コーチメンバーで考えた内容をもとに、以下の対象者に向けたコーチング企画を長野県知事へ提案しました。

子育て中の女性

申込者の多くが「子育て中の女性」であったことから、私たちが関わっていく必要性を感じていることを伝えました。
「子育て中の女性が人生を前向きに歩むことができれば心の豊かな県民が増えるのではないか」そして「その影響は地域や教育、子育て中の就業労働率、少子化対策など県が取り組んでいくことにもつながっていく」と考えています。コーチングを必要とする子育て中の女性に届けるため、子育て支援施設や一時預かり事業との連携、コーチングを受ける際の資金支援の可能性について提案を行いました。

シンポジウムの様子2

産・育休取得者

産・育休の取得は、個々のライフステージだけでなく、組織にとっても大きな成長の機会になります。私たち、はたらクリエイトには、4年間で20人の産・育休実績があり、柔軟な体制変更や制度整備、復帰後の活躍支援等を行ってました。だからこそ、産・育休取得者をサポートすることが本人や組織をアップデートするチャンスになると捉えています。産・育休取得者へのコーチング提供をはじめ、本人・会社・チームを多角的にサポートする仕組み、産・育休を円滑に進めるためのガイドブック作成について提案を行いました。

シンポジウムの様子3

高校生

今回の利用者の中には、10代の中高生の方も少数いました。高校生を始めとする10代は、友達関係や親との関係など「人間関係への悩み」や、自分のやりたい事・目指したい職業が見つからないなど「進路や将来への不安」を抱えがちな世代です。
先生でも親でもない第三者である私たちだからこそ、「何でも話せる心理的安全性」を提供できると考えています。コーチングを高校生にとって身近なものにするため、県内の高校生向けアンケートの実施やコーチング導入のモデル校設置について提案を行いました。

シンポジウムの様子4

教職員

教職員の方からは「元々目指していた教師像はあったが、業務負担が多く時間もとれない状況から定型化された環境に慣れてしまい、追求することを諦めてしまう」といった相談がありました。
近年、教職員は「校務分掌・部活動指導の負担」「保護者対応」「コロナ禍での子どもたちへの対応」など、さまざまな課題と向き合っています。そこで、私たちは教職員が安心して仕事をできる環境づくりが、子どもたちの学びの可能性を広げると考えました。より多くの教職員の声・現場の声をヒアリングする機会を得るため、行政と連携していきたいと伝えました。

シンポジウムの様子5

保育士

保育士の方が抱える悩みとして、「職員間のコミニュケーション不足」「職員数不足」「雑務が多さ」「保育や業務に関する相談ができない」などがあります。元保育士のコーチメンバーからは、「保育士時代にコーチングを受けたかった」という声が聞かれました。私たちは、コーチングによって、「保育士をやりたい」「子どもたちの成長に携わりたい」という保育士の方々の気持ちを尊重し、モチベーションを支えていきたいと考えました。保育士の方々へコーチングを届ける施策として、コーチングを導入するモデル園の紹介を提案しました。

シンポジウムの様子6

地方移住者

長野県への移住を検討中の方からは、「移住に向けて、自分のやりたいことが改めて分かった」という感想をいただきました。移住者が抱える悩みとしては、「移住後の生活における理想と現実のギャップ」「就労、地域コミュニティに馴染めるか不安」「移住先で起業してうまくいくか不安」などがあります。移住先として人気が高い長野県への移住相談が年々増加する中、移住経験者であるコーチメンバーがコーチングを提供することにより、前向きな移住を促進し定着につなげられると考えています。移住検討者の相談窓口である長野県の移住支援担当部署や、移住人材の雇用に積極的な地元企業との連携について提案しました。

シンポジウムの様子7

知事・担当者様よりいただいたご意見

・世の中の評価に囚われて、自分が本当にやりたいことと違うことをやっている人が多くいる中で、本質的な願いを探求していくことは大切
・県でも子どもたちのケアを行っているが、ハイリスクの子どもたちへのケアまでしか行き届いていないのが現状。コーチングはそこに至る前段階でのサポートができるので、自殺対策などにもつながるのではないか
・お金と時間に制限がある方のサポートを行っていくことを考えると、行政の仕組みとセットで連携していくことは有益だと思う。はたらクリエイトのコーチングスタイルを外に向けて発信していってほしい

それぞれの対象者が抱える働き方・暮らし方・生き方に関する悩みや課題、ニーズが明らかになったことにより、はたらクリエイトで提供する「コーチング」に大きな可能性を感じていただくことができました。今後も長野県をはじめ行政機関と連携しながら地域に展開していきます。

プロジェクトを通して見えてきたこと

今回のプロジェクト全体を通して、以下のことが見えてきました。

コーチング提供を通しての気づき

・申込者100人それぞれに、大切とする「価値観」があること、悩みや喜びを感じるポイントが違うこと、どの方も心の奥に「願い」を持っていることに改めて気が付きました。
・コーチングセッションを重ねるたびに、コーチである自分自身も深い学びを得られたと感じています。自分自身や仲間のコーチメンバーが、コーチとして成長している様子も感じられて刺激的でした。

対象者別コーチング企画の提案を通じた学び

・「子育て中の女性」に向けてコーチング企画を考えたときに、「はたらクリエイトだからこそできる大きな可能性」があることに気付きました。どんな価値を提供できるのか、多角的な視点から考えていきたいです。
・「コーチングを提供したい相手」と「どう事業化していくのか」という2つの観点のバランスが難しいと感じました。一方で、「実際に自分が事業を提案するならどうするか」を考える良い機会にもなったと思います。「持続可能性」を意識しながら、今後もプロジェクトをブラッシュアップしていきたいです。

まとめ

プロジェクトの運営を通しての感想(本郷)

今回の「長野県100人コーチングプロジェクト」は、今後「コーチングをどのように事業化し、その価値を届けていくか」を考えていく上での大きな一歩になりました。コーチング継続希望のリクエストも多くいただき、地域へコーチングを広げていくことに大きな可能性を感じています。
「コーチングを通してクライアント(利用者)が本質的な願いに気付き、体現していくこと」そして「可能性を波及していくこと」は、私たちが地域と一丸となってコーチングを提供するからこそできる役割だと、改めて実感しました。
コーチングが地域で暮らす人々にとってより身近なものになるよう、今回後援をいただいた長野県をはじめ行政機関と連携しながら、今後もコーチング事業を展開していきたいと思います。